アイルランド総選挙


今日はアイルランドで総選挙が行なわれています。
最新の調査によれば今回は大変な接戦になりそうだとのこと。
現時点では与党のアイルランド共和党(Fianna Fáil)がやや優勢で、
浮動票も多くがこちらへ流れるだろうと予想されています。
しかし、最大野党の統一アイルランド党(Fíne Gáel)も支持率が高く、
場合によっては政権が交代する可能性も十分に残されているようです。


共和党のBertie Ahern首相が率いる現政権は1997年に発足しました。
以来10年間、アイルランドは様々な面でめざましい活躍を見せています。
それらのすべてを現政権の成果と見なすわけにはいかないでしょうが、
今回の選挙で強い後押しとなることは間違いないと思います。


最も目に付くのは、「ケルティック・タイガー」と呼ばれる劇的な経済成長です。
現政権の最大の成果は、これを牽引し、維持してきたことだと思います。
今やアイルランドは最新の自動車とEU内外からの外国人労働者で溢れ、
以前の貧しさからは想像も付かないような景気に沸いています。
バブル崩壊の懸念はあるものの、経済は依然として好調とのことで、
少なくとも今後しばらくは今の好景気が続きそうです。


また、アイルランドEUにおけるプレゼンスは現政権下で揺ぎないものとなりました。
特に議長国を努めた94年には欧州憲法の採択を巡って強いリーダーシップを示し、
巧みな外交手腕と粘り強い交渉術が高く評価されました。


さらに、北アイルランド紛争を巡っても重大な成果がありました。
アメリカの協力の下、アイルランドとイギリスが主導してきた和平工作が功を奏し、
敵対する北アイルランド各政党の代表による初めての直接会談が実現、
先ごろ数年ぶりに自治政府が復活するに至ったのです。
対立は根深く、まだまだ楽観することはできませんが、
和平への取り組みが現実の姿を取り始めたことは注目に値します。


このように、現政権は数々の華々しい成果をあげてきましたが、
一方で、いわゆる負の遺産を多く残してきたこともまた事実です。
犯罪の増加、医療の制度や施設の質の低下、
都市部の若者を中心とする薬物汚染の蔓延など、
現在のアイルランドには深刻な社会問題が山積しています。
加えて、選挙の直前には現首相による金銭授受疑惑が浮上し、
与党にとってはまたとない攻撃材料を与える結果となりました。


アイルランドは、過去10年間をどのように評価し、
将来をどのような政権に委ねることになるのでしょうか。
選挙の結果が待たれます。





Election 2007 (The Irish Times)
http://www.ireland.com/focus/election2007/


Election 2007 (Irish Independent)
http://www.independent.ie/election2007/


Election 2007 (RTÉ)
http://www.rte.ie/news/elections2007/