良寛の「没絃琴」

雨も上がり、静かな晩になりました。
良寛漢詩を思い出します。


 「没絃琴」   「没絃の琴」     

 静夜草庵裏   静夜 草庵の裏
 独奏没絃琴   独り奏す没絃の琴
 調入風雲絶   調べは風雲に入りて絶え
 声和流水深   声は流水に和して深し
 洋々盈渓谷   洋々渓谷に盈ち
 颯々度山林   颯々山林を度る
 自非耳聾漢   耳聾の漢にあらざるよりは
 誰聞希声音   たれか聞かん 希声の音


勝手な意訳を付けるとすれば、
次のようになるのでしょうか。


「静かな夜、あずまやの裏で、たった独り、弦のない琴を奏でている。調べは風雲に溶け、音色は水の流れに相俟って深く響き、洋々と渓谷に満ちては、颯々と山林を渡ってゆく。耳の聞こえない人でなければ、この尊く稀な音を聞くことはできないだろう。」


わめき散らしたくなる時も多々ありますが、
そういう時こそ静かに座ってため息でもつき、
耳を澄ましてみるのがいいのかもしれません。
それでなくとも世界にはさまざまな音が溢れ、
人は言葉にまみれて生きているのですから。


もう一杯だけお酒をいただいて、
今夜は早く横になろうと思います。