アメリカ大陸最古の文字発見か?


アメリカ大陸最古の文字と思われる模様が彫り込まれた石塊がメキシコで見つかったそうです。オリジナルの論文はまだ読んでいませんが、Science誌の今月号に掲載されているとのこと。専門外ではありますが、あらゆる文字体系に魅力を感じるぼくにとっては、非常に興味深いニュースです。


・「Writing on Stone May Be Oldest in the Americas」 -The New York Times
 http://www.nytimes.com/2006/09/14/science/14cnd-olmec.html?_r=1&oref=slogin


・「米大陸最古の文字か 紀元前900年の石塊発見」 -産経新聞
 http://www.sankei.co.jp/news/060915/kok003.htm


石塊そのものは1999年に発見されたもので、紀元前900年代頃に中央アメリカのオルメク帝国で作成されたと考えられているようです。そこには62個(Japan Times紙によれば61個)の記号と見られる模様が刻まれており、記号列の出現パターンなどから、言語を表記した文字である可能性が高いとのこと。また、いくつかの文字列が対をなして出現していることから、二行連句の詩か韻文が書かれているという説もあるそうです。ただし、New York Times紙などの報道によれば、年代や真正性については異論も出ているとか。


仮にこれが文字であるとすれば、これまでその存在が予想されながら未発見だったオルメク文字であり、アメリカ大陸における最古の文字体系ということになるのでしょう。このことが実証されれば、アメリカ大陸における文字体系の発生と発達を考える上で、重要な知見をもたらす可能性があります。


現在知られている文字体系の多くは、メソポタミア、エジプト、中国など、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の一部で発生し、多様な発達を遂げながら伝播してきたものです。一方、南北アメリカ大陸で使用されてきた文字体系は、数の上でも種類の上でも限られており、いわゆる旧世界の文字体系に見られる華々しさとは対照的です。特にコロンブス以前のアメリカで使用されていた文字体系は、今日までに数種類しか確認されていない上、その分布範囲は中央アメリカ周辺に限られています。加えて、それらの文字体系はいずれも表語音節体系(logosyllabic system)であり、類型的な多様性が認められません。


なぜ、アメリカ大陸では中央アメリカにおいてのみ文字体系が発生したのか?それらの文字体系は共通の起源を持つのか?それとも、まったく別個に多発的に発生したのか?アメリカ大陸には表語音節体系以外の文字体型は存在しなかったのか?


今回の発見は、これらの疑問に何らかの答えを与えてくれるかもしれません。今後の研究が待たれます。