秋晴れ


昨夜は雨が降っていたのですが、
今日はからっと晴れて素晴らしい天気になりました。
秋の晴天といえば、ぼくはきまってこの詩を思い出します:

秋は喨喨と空に鳴り
空は水色、鳥が飛び
魂いななき
清浄の水こころに流れ
こころ眼をあけ
童子となる


多端紛雑の過去は眼の前に横はり
血脈をわれに送る
秋の日を浴びてわれは静かにありとある此を見る
地中の営みをみづから祝福し
わが一生の道程を胸せまつて思ひながめ
奮然としていのる
いのる言葉を知らず
涙いでて
光にうたれ
木の葉の散りしくを見
獣の嬉嬉として奔るを見
飛ぶ雲と風に吹かれる庭前の草とを見
かくの如き因果歴歴の律を見て
こころは強い恩愛を感じ
又止みがたい責を思ひ
堪へがたく
よろこびとさびしさとおそろしさとに跪く
いのる言葉を知らず
ただわれは空を仰いでいのる
空は水色
秋は喨喨と空に鳴る


     高村光太郎 「秋の祈」(『道程』より)


初めて読んで強い感銘を受けたのが高校生の頃だったでしょうか。
あれから10年ほどが経ちましたが、毎年毎年、秋晴れともなれば、
岩波文庫の『高村光太郎詩集』を鞄に入れて散歩に出ます。










高村光太郎詩集 (岩波文庫)

高村光太郎詩集 (岩波文庫)