いつぞやに続き、山手線のホームでのこと(実話)

ある雨の日のことです。
駅で電車をまっていたおじいさんが、
線路にめがねを落としてこまっていました。

ああ、めがねが雨にぬれてしまう。
それに、もうすぐ電車がきてしまう。
こまったなあ、こまったなあ・・・

そのときです。
ひとりの駅員さんが、駅のホームのむこうから、
長いぼうのような道具をもって走ってきました。
その道具の先には、ものをつかむ手がついていて、
おとしものをひろいあげることができるのです!

さっそく駅員さんはめがねをひろいあげ、
「はい、どうぞ」と、おじいさんにわたしました。
おじいさんはおおよろこび。
ぺこぺこ頭をさげながら、
「ありがとう、ありがとう」とくりかえしました。
駅員さんはすっかりてれてしまったようです。
「いえいえ、よかったですね」といいながら、
さっとまわれ右して歩きだした、そのとき。

"ガツン!"

はしらにあたまをぶつけてうずくまる駅員さん。
めがねを持ったままぼうぜんとするおじいさん。
それを正面から見てしまったぼく。

はだざむい雨ふりの駅のホームで、
それぞれの時間がこおりついていました。



注:あの道具は「安全拾得機」というそうです。